ここ2年、夏場に「虫を食べる会」を開催していたのですが、今年はバタバタしたまま、やっていませんでした。そのまま忘れて冬に突入しようとしていたら、原っぱ大学千葉のジョニーことショーコより、「ガクチョ、明日は虫の料理してね」と剛速球が飛んできました。

どうやら、千葉のフィールド、キングフィッシャーガーデンには秋の虫がたくさん飛んでいるらしい。実りの秋。これを頂かなくては始まらないらしい。千葉リトルのフィールドで子どもたちと虫を食べることにしました(しかも参加者には当日、現場までお知らせ無し)。

現地に行きますと、確かに虫だらけ。大小のバッタが飛びかっている。無数のトンボが漂っている。食料には事欠きませぬ。やるな、ショーコ。

朝、参加者が徐々に集まってきます。さすが、フィールドで遊びなれた子たちだけあって、みんな手に虫かごや虫網をもってきています。この季節、虫がたくさんいることを知っているのね(でも食べる気ではない)。

集合して、その日の遊びをどうしようかみんなに話す流れで、「今日は虫を獲って食べるよー」と明るく伝えたところ、場に微妙な空気が流れました…。苦笑いする大人、どう反応していいかわからない子ども。自分が獲った虫たちを食べられたくないと泣く子。僕と目を合わさない人たち多数…。

しまった…。

その場は適当にノリでごまかして、何とか事なきを得ました。そして食べる/食べないをあいまいなままに、虫取りに精を出す子どもたちとワタクシ。

徐々に虫かごにはバッタ、トンボが溢れてきます。

もはや「食べる」とか持ち出すのをやめよう、とひよりかけたころ、ひとりの子が「虫の料理の時間はまだー??」ですって。あ、食べる気満々で獲っていたのね、あなた。

出たな、野人。子どもらと「虫を食べる会」をやると必ず一人は出現する野人。怖さよりも好奇心と本能が勝り、食べることに前のめりなかっこいいやつ。もうね、そういう子が出てくると逃げるわけにはいかないのです。わかりました、やりますよ。

原っぱ大学の「虫を食べる会」の調理方法は王道の油と塩です。人類の発明、油と塩があればどんな食材でも旨いのです。

油を熱していると徐々に子どもたちが集まってくる。大人たちは一歩引いて外側から眺めている。これもね、いつもの光景。最初に殻を破るのはいつだって子どもたちなのです。

まずはバッタ。程よく温まった油にバッタを生きたまま入れますと、一気に動かなくなり、真っ赤になります。普通の揚げ物と一緒で、ジュウジュウ音がしなくなったら上げ時。さっとあげて塩をふって、できあがり。

1番バッターは先ほどの男の子。何の躊躇もなくパクリ。「うん、おいしい」。さすがです。

もうね、1番バッターがこうだとあとはスイスイです。2人目、3人目の子どもが続いて、おいしい、おいしい。大人も恐る恐るパクリ。あ、うまい・・・。

エビなんです。エビ。サクサクのエビです。ここから先は子どもたちの好奇心がすごい。トノサマバッタとショウリョウバッタはどっちがうまいのか食べ比べたり、トンボの頭と尻尾の食感の違いを楽しんだり、蝶の羽を食べてみたいと必死に蝶を追いかけまわしたり…。

こちら、モンシロチョウの素揚げ(はじめてです)。

食べた子曰く、「おいしい!」とのこと。本当かしら!?

こうやって、子ども達の好奇心と本能によって大人の僕らがもっていた思考の枠が取り払われていくというのは本当に気持ちいい経験です。

そんな盛り上がりのさなかの出来事。男子ハンターたちが野に獲物を探しに狩りに出かけているタイミングのことです。割と控えめで自分のペースで動くことを大事にする&お母さんと行動することが多いとある女の子がさっと僕の脇に一人でやってきました。その子、その日の冒頭に僕が「虫を食べるぞー」といった時に顔が曇ったような気がして、気になっていた子でした(優しい子だから、生きている虫を捕まえて食べるなんてきっと嫌なんだろうな、なんて勝手に想像していました)。

彼女は僕の脇でバットに残っていたバッタに塩をふりふり。どうするんだろ、と思って見ているとそのバッタをさっと口に運んでパクリ。いたずらっぽく僕のほうを見て笑って、さーっと離れていってしまいました。

虫を食べるのが偉いとか、勇気があるとかそんなことを言うつもりはさらさらありません。食べたくないなら食べないでよろし。それぞれが好きなように過ごせばいいのが原っぱ大学。

でもね、なんかそういう、誰からも言われるんじゃなくてさっとやってきて、パクっと虫を食べて颯爽と去っていくその子の潔さというか清々とした軽やかなさまがあまりに素敵で、僕まで明るい気分になりました。

そうそう、冒頭に自分が獲った虫を食べられたくない!と虫かごを守って半べそをかいていた子も最後にはその虫かごからバンバン油に虫を落とし、食べまくっていました。順応性高い…。

虫を食べる。ドラマだなぁ。

※ちなみに、調理した(殺した)虫はすべてありがたくいただいております。が、1匹だけ、油の温度調節に失敗して半生で殺したけど食べられなかったことを告白します。合掌。

all photo by Shinya Fujiwara